読みながら、『芸術』を考える。
(1)現代アートによる「公共」への介入について考える
<ゲスト>
小泉元宏(東京芸術大学大学院博士課程在籍/日本学術振興会特別研究員)
■現代社会の政治的・経済的背景の目まぐるしい移り変わりは、芸術を取り巻く環境の変化を呼び起こし、さらに作品制作や発表の場、展示活動などに大きな影響を与えています。都市や国といった空間の境界を越えて、多様な情報、モノ、人々の行き来が盛んに行なわれる社会が現れるなかで、絶え間なく新たな出会いの場が時間と空間を越えて引き起こされ、それが常に芸術を駆動させているのです。
■この連続企画では、ウェブや雑誌媒体の中の文章、展覧会のカタログ、論考などを読みながら、参加者間で意見を交換し合い、「芸術」「アート」「社会」「政治」…の現在を考えていきます。
第一回目参照(予定)のテクスト
シャンタル・ムフ『闘技的公共空間に向けて』(Chantal Mouffe, For an agonistic public sphere)
イェローン・ブームハルト『ラディカルな自律性』(Jeroen Boomgaard, Radical autonomy)
■「ドクメンタ(documenta)」という展覧会を知っていますか。「ドクメンタ」は、ドイツのカッセルという街で、1955年以来、およそ5年ごとに 開かれている現代美術の展覧会(国際美術展)です。数百人のアーティスト、そして数十万の観客が集まる世界屈指の大規模な展覧会のひとつとして知られています。
■今回取り上げるムフという政治哲学者の短いテクストは、「民主政治」の在り方に関して書かれたもので、社会における権力関係の役割や、そこに含まれる敵対関係に関する考察が含まれています。それは、一見すると「芸術」とは無関係なものであるようにも思えます。しかし、このムフの文章は現代美術展覧会である第11回「ドクメンタ」(ドクメンタ11、2002年開催)のカタログの中に掲載されたものなのです。なぜ「政治理論」が展覧会のカタロ グに載っているのでしょうか。
■「読みながら、『芸術』を考える。」シリーズの第一回は、ムフの文章と、美術史家のブームハルトの文章(こちらはアートに関することがらが含まれています)を読みながら、社会と「関わり」を持とうとする「芸術」について考えていきます。
※当日、テクストやレジュメ(日本語)を配布しますが、参考までにこちらから文章をごらん頂くこともできます(2009年2月20日現在)。
『闘技的公共空間に向けて』
http://www.ciudad-derechos.org/english/pdf/kb.pdf
『ラディカルな自律性』
http://www.lkpr.nl/index_en.php?page=publicaties&id=10
日時:2009年3月26日(木)20:00〜22:00
会場:Otto Mainzheim Gallery(アクセス)
定員:30人(予約制) 参加費:1,000円(1ドリンク付)
【 プロフィール 】
小泉元宏|Koizumi Motohiro
長野県出身。現在、東京芸術大学大学院博士課程在籍、日本学術振興会特別研究員。専攻は西洋音楽史、近現代美術史、社会学。東アジア地域のフィールド調査を行いながら「国際美術展」「音楽祭」などを対象として、芸術と社会のあいだの関係性・政治性について研究している。