A Critical Journal on Contemporary Art『Pa+』

//////////
特集:フォビアと芸術生産
//////////

芸術生産に関わる人々が「フォビア」について考えるためのタブロイド紙『Pa+』


<CONCEPT>
ミヒャエル・ハネケの映画作品《コード・アンノウン》は、短いシークエンスを通して、人と人とのすれ違いを繰り返し描き出します。地下鉄で移民の少年にからまれ、去り際にツバを吐きかけられる主人公の女性。一方で、乗客たちや女性からいないもののように扱われる少年。そして、すぐそばで起きている女性と少年のやり取りから目を背け、押し黙る乗客たち。

登場人物はみな、恋人や家族、職業や価値観のような身近でごく個人的なことから、国や人種のように個人レベルではどうにもならないことにまで、嫌悪と無理解を抱えながら、閉塞感の中に生きています。彼らは理解されたいと望みながら理解されることはなく、また逆に、理解したいと望みながら理解することができないのです。言葉は正しく伝わらず、異なる人種や国籍、世代間でのコミュニケーションは失敗に終わります。善意は理不尽な暴力になり、互いへの嫌悪と無理解ばかりが増幅されていきます。

フォビアとは何か?
私たちは何をフォビアの対象とするのか?
フォビアを持たない人はいるのか?
個人的なフォビアと社会的なフォビアはどこが違うのか?
フォビアを読み解くことは可能か?
フォビアは解消できるのか?
解消されないとしても、いかに対峙することができるのか?

このプロジェクトは、個人や社会が何らかの形で抱える「フォビア」について考え、芸術生産がどのように関わることができるのか、可能性を探ります。

<CONTENTS>
粟田大輔(美術批評)「金縛りと夢」
榎本浩子(アーティスト)「話したくないこと」
河口 遥(アーティスト)「母に描かれる 母の子 母とモデル」
岸井大輔(劇作家)「戯曲 島」
金 善瓔(日本居住韓国人)「キンパ」
倉茂なつ子(芸術表象)「80年代生まれの彼女たち」
小泉明郎(アーティスト) 
小林 杏(写真研究)「わたしたちと彼らの、恐れと欲望―<遺影写真>と<死児写真>-」
齊藤哲也(芸術表象)「甘美なる嫌悪と嘔吐」
サエボーグ(アーティスト)「二匹の蛇を持つ女神」
菅谷奈緒(アーティスト)「他者 / リスク / 不和 / セキュリティ / 信頼についての覚書」
杉田 敦(美術批評)そこに行かなくてはならないと感じていた
橋本 聡(アナリスト、アナーキスト、アーティスト、アラブ、アブストラクト、アクト)「Fw: Forbes list of The World's Most Powerful People, 2014」
平川典俊(アーティスト)「フォビアから今日からの私たちへ」
増本泰斗(アーティスト)「2週間ほど毎晩おこなった家族フォビア会議(絵しりとり+連想ゲーム)の結果」
村田紗樹(アーティスト)「夜道」
山本浩貴(美術・学術)「書かれなかった歴史に光を当てる:アートと民族的フォビア」
森村泰昌(美術家)「なにものかへのレクイエム(宇宙の夢 / アルベルト2)」

価格:500円
発行日:2015年3月23日
全24ページ


//////////
タブロイド・パーティー
//////////

芸術生産に関わる人々が「フォビア」について考えるためのタブロイド紙『Pa+ フォビアと芸術生産』を出版します。『Pa+』とこれまで出版した #001『Na+ ナショナリズムと芸術生産』、#002『Ra+ 経験と芸術生産』を会場に展示し、執筆者などを招いたイヴェントを開催します。
※「タブロイド紙のためのパーティ」「扇情的なパーティ」「下世話なパーティ」「扇情的な党派」「大衆的な党派」など

日程:2015年3月30日(月)〜4月4日(土)
時間:12:00〜19:00 ※最終日のみ20:00まで
場所:表参道画廊(東京都渋谷区神宮前4-17-3 アーク・アトリウム B02)

<アクセス>
「表参道」駅(A2出口)徒歩6分
「明治神宮前」駅(地上エレベーター口)徒歩6分
「原宿」駅(竹下口)徒歩10分
http://www.tokyoartbeat.com/venue/05A60035

▼3月30日(月)
===
12:00-19:00|搬入イヴェント
===
16:00-19:00|村田紗樹 「夜道のためのウォーミングアップ」
寄稿した原稿をもとに行う24時頃からの「夜道の公演」にそなえて、会場ではウォーミングアップを行います。
===

▼3月31日(火)
===
17:30-19:00|菅谷奈緒「呪いつつ考える。」
ポリティカル・コレクトネス、相対主義、「表現の自由」、ヘイトスピーチ、全体主義、レイシズム、反知性主義、マイノリティ/マジョリティ、被害者/加害者、善意/悪意…。
例えば、在日韓国人は日本人以上に優遇されていると主張する在特会、渋谷区の同性愛パートナーシップ条例に対し「同性間だけにパートナーシップを認めるのは異性愛者差別」と批判する自民党議員、女性専用車両は現代のアパルトヘイトであるとする「女性専用車両に反対する会」etc.。かれらの主張に通底するのはポリティカル・コレクトネス(または左翼的言説)に対する不信、反発、あるいは多様性に配慮するポリティカル・コレクトネスを逆手にとった「我こそが抑圧ないし排除されている弱者・被害者・マイノリティである」という論理ではないだろうか。
表現の自由の危機を憂い、全体主義的、独裁者というレッテルを貼ることで敵の言説を無効化し、弱者・被害者・マイノリティという立場に自身の主張の正当性を担保する終わりなき戦いに、あえて強者として加害者としてマジョリティとして両刃の剣を手に挑む実験の場。
===

▼4月3日(金)
===
17:00-19:00|二十二会「変な動きサイファー」
===

▼4月4日(土)
===
12:00-17:00|搬出イヴェント
===
12:30 - 13:30|山本浩貴「ギリポリ(ギリギリ・ポリティカル・コレクトネス)」
コンテンポラリー・アートの歴史における、フォビアに関する様々な論争的な作品を例に、PC的あるいは倫理的にOKな作品とNGな作品の境界線をどこに引くことができるかについて皆で議論します。このアイデアは、友人がロンドンのナイトクラブで出会った日本の2人組のギャルたちが「私たちギリホリ(年齢制限ギリギリの30歳でワーキングホリデーのビザを取得することを意味するらしいが、一般に流布されている用語であるかは不明)」と言っていたことを、ロンドン出発当日の朝の入浴中に発表者が思い出したことに端を発します。簡潔に言えば、単なる思いつきに過ぎないということです。参加者のみなさんには、いままでに見たことのある、または耳にしたことのあるコンテンポラリー・アートの作品 (あるいは自分や知り合いの作品でも構いません)で、自分の中でPC的あるいは倫理的に「ギリギリOK」なものと「ギリギリNG」なもの、あるいは「どちらか決めかねている」ものを事前に考えてきていただき、それらをディスカッションを通してマッピングしていきます。
===
14:00-15:00|岸井大輔「立ち寄る」
===
17:00-20:00|クロージング・パーティー
===