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TALK: 0522

Crime Against Art #2「社会問題のフレーミング」

<ゲスト>
佐藤仁(東京大学東洋文化研究所准教授)
<モデレーター>
長谷川仁美(ミアカビデオアーカイブ)

■美学は語源学的には、感性学から倫理学とともに派生しました。つまり、論理学ではわりきれない学問として、このふたつは同じものです。美術においては倫理がひとつの重要な要素ともいえます。
■前回の「Crime Against Art」では、岡部あおみ先生の示唆に富んだお話を伺いました。その中で、チャールズ・エッシがグローバリゼーション、新自由主義(ネオリベラリズム、の方がわかりやすい、という声もありましたね)をひとつの(Crime Against Artの)元凶と言っていたことから、議論がその辺の民主主義などの話にもなりました、つまり、芸術が民主主義を補強する役割をもつことについてです。
■また、マリア・リンドは現在の創造経済的政策(クリエイティブ・シティという言い方も日本ではよくされます)は芸術を経済の道具としているとはっきり言っていました。
■これらの橋渡しになる論者、経済、民主主義、倫理学を新たな正義の視点から論じたのは、ノーベル経済学賞も受賞し、近年注目も高まるアマルティア・セン博士ではないかと思います。
■そこで、ハーバード大学でセンに師事していらした東京大学東洋文化研究所准教授の佐藤仁先生に、「社会問題のフレーミング」というテーマでお話を伺います。佐藤先生は資源問題をご専門になさっており、資源環境問題を主な題材とする「フレーミング」、つまり「問題の立て方」について熱帯林保全の問題を例に取り上げますが、特定のフレーミングが権力構造を固定化する作用をもつといった政治性の話題が中心になります。以上の話しを導入にして、アマルティア・センの「サイエンスとアート」についても触れたいと思います。

《A Crime Against Art》
2007年にARCO Art Fair(スペイン)で開催されたユナイテッドネイションズプラザの偽裁判、いわゆるマドリッド裁判の記録をもとにした映像作品です。1930年代のアンドレ・ブルトンらが行った偽裁判の手法を踏襲し、「新しいブルジョアジー」との癒着、アートの道具化、批評的なアートの媒介の可能性、その他の現代アートの世界におけるトピックのいくつかを劇場的効果をねらいつつ取り扱っています。被告人および脚本はユナイテッドネイションズプラザの Anton VidokleとTirdad Zolgdhar、検察はVasif KortunとChus Martinez 、弁護士はCharles Esche、判事はJan Verwoert 、参考人はMaria LindとAnselm Frankeです。パートごとに現れる印象的なテキストはLiam Gillick.、制作はマニフェスタ7のキュレーターも勤めたHila Pelegが行いました。

ユナイテッドネイションズプラザ(unitednationsplaza)
2006年、マニフェスタ6の中止という挫折を経て、アーティストでそのマニフェスタのキュレーターでもあったアントン・ヴィドクルを中心として始まりました。場所はベルリンのスーパーマーケットの裏の建物で、1年間の期間限定で“学校としての展覧会”をテーマに、ハンス・ウルリヒ・オブリストやリクリット・ティラバーニャなどすでに100名以上のアーティストや作家、美術評論家、思想家などとコラボレーションを行っています。活動としては、パーティ,オークション、レクチャー、ディスカッション、レジデンス、展覧会などで、現在もリニューアルされた同じ場所で、「Building」プロジェクトを行っています。コアメンバーとしては、リアム・ギリック、ボリス・グロイス、マーサ・ロスラー、アンセルム・フランケ、ヤン・バーボウト、ティルダッド・ゾルガダほかがいます。
http://unitednationsplaza.org

日時:2009年5月22日(金)20:00〜22:00
会場:Otto Mainzheim Gallery(アクセス
定員:30人(予約制) 参加費:1,000円(1ドリンク付)

【 プロフィール 】
佐藤仁|Jin Sato
1968年生まれ。【学歴】東京大学教養学部教養学科文化人類学分科卒業、同大学大学院総合文化研究科修士および博士課程修了(学術博士)。ハーバード大学ケネディ行政学大学院公共政策学修士課程修了。【職歴】イエール大学農村研究プログラム・ポスドク研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科助手・助教授などを経て、2009年4月から東京大学東洋文化研究所准教授。【原体験】院生時代にタイの奥地山岳地帯で1年間、カレンの人々と暮らした。【著書】『稀少資源のポリティクス〜タイ農村にみる開発と環境のはざま』(東京大学出版会、2002年)など。また、留学時に師事したアマルティア・センの『不平等の再検討〜潜在能力と自由〜』(岩波書店、1999)を共訳。【最近の研究テーマ】「資源や環境の支配は、どのようにして人間の支配へと転化するか」。
長谷川仁美|Hitomi Hasegawa
ミアカビデオアーカイブ主宰。スウェーデン国立美術デザイン大学(コンストファック)キュレーターラボ修了、慶応大学大学院美学美術史学専攻アートマネージメント分野修士。美術映像のアーカイブを2006年に設立、運営。また展覧会企画や、美術に関わるシンポジウムの企画などに携わる。企画した主な展覧会:ノーオーディナリー(ストックホルム彫刻美術館)、What's the difference Between..? (クンストビューロ、ウィーン)、呼吸する部屋ーパトリシアピッチニーニ個展(東京都写真美術館)など。
http://www.miaca.org/