TALK: 0320

KABEGIWA meets Yasuto Masumoto and more..

<ゲスト>
冨井大裕(アーティスト)
増本泰斗(アーティスト)

■2009年1月、武蔵野美術大学内に存在するアーティスト冨井大裕が主催するスペース「KABEGIWA」にて、アーティスト増本泰斗の個展「The World」が開催された。
■今回のトークは、先述の展覧会「The World」を巡るものである。討議は、実際に展示された映像作品やこれまでの「KABEGIWA」の活動記録などを参照しながら、ラウンドテーブルの形式で開催される。主催の二人だけでなく、訪れた観客もまたプレイヤーの一人としてトークに参加する権利を有している。会場に居るすべての人が、プレイヤーでありオーディエンスでもあるのだ。展覧会「The World」は、当トークイベントにおいては討議のための単なる一つの契機にすぎないだろう。
■美術内の狭い討議から端を発し、入れ替わるトピックとプレイヤー、入り交じるアルコールと煙草のけむり、躍動、停滞、怒り、喜び、そして感動。はたまた、会場の片隅で育まれる愛。会場内で起こり得る、一つ一つのとりとめのない出来事の重層が、狼煙となって八丁堀の夜空に立ち上る。それは、どんな出来事であれ、展覧会としてそこここに成立する可能性があることを我々に示しているのかもしれない。

KABEGIWA
現在は武蔵野美術大学内にある、不定期で活動するスペース。どのような場所であっても、その時々に必要な目的と秩序さえあれば良い展覧会、表現の場は創出できるという意思のもとに展覧会や何らかの試みを行う。以上のことは全く当然のことであり、また出来ていなければならないことであるが、様々な要因によって、本来できるはずのことができないのが美術の現状ではないかと考える。当たり前のことを当たり前にやる為の場所を確保すること。それが、KABEGIWA(壁ぎわ)を続ける理由である。

The World
現在、増本が主に取り組んでいる映像作品シリーズ。外国語で書かれたレシピをその言語を全く解さない人に渡し、あらかじめ用意された材料を手がかりに料理を作ってもらう過程を捉えた記録映像。出演者達は、レシピへの「理解」が困難な状況下で様々な言動を駆使しながら料理を遂行していく。いい加減な解釈や間違い、出演者同士の認識のズレ、ここで問題となるのはそうしたコミュニケーションの不全ではない。外国語で書かれたレシピと向き合う人間のふるまいや会話、そこから生まれるズレの積み重ね。増本はこの日常レベルで展開されるドラマの中に現在の世界のあり様を見ている。


日時:2009年3月20日(金・祝)19:00〜21:00
会場:Otto Mainzheim Gallery(アクセス
定員:30人(予約制) 参加費:1,000円(1ドリンク付)

【 プロフィール 】
冨井大裕
|Tomii Motohiro
1973年新潟県生まれ。埼玉県在住。1999年武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了。日用品の使用と原理的な彫刻の両立を試みる希有な作家として知られる。これまでに個展・グループ展多数。2007年に埼玉県立近代美術館での「ニュー・ヴィジョン・サイタマ 7つの眼×7つの作法」に参加。2008年3月より、茨城県のアーカス・スタジオにて、個展「企画展=収蔵展」を作品が朽ちるその日まで開催中。
増本泰斗|Yasuto Masumoto
1981年広島県生まれ。東京都在住。2004年東京工芸大学大学院修士課程メディアアート専攻写真領域修了2004年より都内を中心に個展・グループ展などで作品を勢力的に発表。2007年には、ポルトガル、リスボンにあるMaumaus主催のレジデンシー・プログラムに一年間滞在制作、及び、発表を行う。作品は写真、映像、インスタレーションと多岐にわたり、日常そのものへの懐疑を日常から離れることなく観察し続け、その辛辣な視線から生み出される表現は、辛辣であるが故のどこか温かいユーモアが漂っている。春以降、横浜や東京などで「The World」に関連した展覧会やパフォーマンスをいくつか予定している。